​生と死と性と

 怖い夢を見たの…と、真っ暗な部屋の天井の虚空を見ながら君が呟く。

 

 4月16日。緊急事態宣言が発令されてからこの言葉を何度か聞いた。

大学生の時以来の一日中彼女とずっと過ごす生活。止むことのないテレビのニュース。どこか高揚しながらもいつもと変わらない生活をしようとしている自分に気づく。

 

 彼女とずっといることに苦痛なんかない。彼女は察して僕のカメラに身を預ける。いつもよりも僕の要求に素直に従ってくれる。その時に思う。やっぱり違う。こいつも変になっている。

こんなに生きていることを意識したことはない。

 残そうという気持ちが抑えられない。記録に。性的に。

 

 人の居ないところへ息抜きにカメラをもって出かける。今まで見てこなかったものが新鮮に、鮮明に見えてくる。世界を写したいとさえ思えてくる。

 

 電話が鳴る。祖父が倒れた。

 病院は厳戒態勢で入れてくれない。93歳になった祖父とは普段からそんなに交流はなかった。年に数回顔を見せに行くくらいの距離感。

 

 

 

 ソーシャルディスタンスでだだっ広い会場に親族のみ。僕が撮った祖父がこちらを見つめる。

 あの日から夢のような月日だった。僕が見ていた世界はとても綺麗でとても暗かった。世界はそんなにシンプルじゃない。